2017年11月30日木曜日

アルコールは発がん物質?


(2017/11/30)

● アルコールは発がん物質か!


 2017年11月、「米国臨床腫瘍学会」が、アルコールは発がん物質である、と述べて飲酒を見直すよう提言。

 かねてからアルコールとがんの関係性については、さまざまな研究結果や論文等が発表されていましたが、このほど「米国臨床腫瘍学会」という医学界でも権威ある学会が「アルコールは発がん物質である」として飲酒の見直しを提言、大きな話題となっている。


1.アルコールは発がん物質

 アルコールに発がん作用があることは、30年ほど前から、発がん物質についての研究を行っている権威ある国際機関が、アルコールを「人間に対する確実な発がん物質」と認定しています。

 しかしながら、この事実は、多くの医学会からほとんど無視されていました。そのために、一般の人々のなかでも、その事実を知る人は少なく、そのような背景があったので、今回の米国臨床腫瘍学会の提言は画期的なものでした。
 しかしながら、欧米の多くのメディアはこのことを取り上げましたが、日本のメディアで取り上げるところはあまりありませんでした。

 アルコールが原因の一つであることが医学的に判明しているがんは多数あります。口腔がん、咽頭がん、食道がん、大腸がん、肝がん、そして乳がん等です。さらには、長期大量飲酒者がタバコを吸うと、発がんのリスクはさらに高まります。


2.アルコールと食道がん

 アルコールによる発がんでは、特に体内でアルコールが直接接触する臓器で発がんのリスクが高まることがわかっております。例えば、推奨量上限の3倍もの飲酒を続けていると、食道がんを発症するリスクが8倍になります。さらにアルコール度数の高いお酒を飲むひとでは、リスクが高くなります。

 例えば、沖縄県ではもともと食道がんが多いことが知られています。その要因として、アルコール度数の高い泡盛がよく飲まれていたことも関係していると示唆されます。

 食道がんの5年生存率は10パーセント未満と言われていますので、その予防が大切になります。

 すなわち節酒です。水を混ぜて、アルコール濃度を下げるのも良いでしょう。最近では、アルコール度数の低いマイルド泡盛が酒屋さんに並んでいますので、泡盛愛好家のひとは出来るだけそのようなブランドに切り替えてもよいでしょう。


3.アルコールががんをきたす機序

 アルコールが発がんをきたす機序として、その代謝物であるアセトアルデヒドの作用が疑われています。日本人ではアセトアルデヒドを分解する酵素の活性が弱いひとがいますが、そのような人々では食道がんなどのリスクが高くなっています。お酒を飲んだら顔がすぐに紅くなるひとは注意しましょう。また、そのような人にはお酒を無理に勧めないようにしましょう。

 また、アルコールは溶媒でもあるので、質のよくない酒類によっては、飲みやすさや、味をよくするための添加物質が加えられているものもあり、そのような物質の中には発がん作用を持つものもあると疑われています。

 最近、アイルランドはお酒の販売での最低価格を法律で制定しました。ギネスビール500ミリリットルの価格は最低でも1.66ユーロ(日本円で280円)以上となりました。アイルランドは飲酒による健康被害が深刻でしたので、このようなルールが導入されたという経緯があります。

 その他、外国ではタバコや酒類のTVのCM(広告・宣伝)などに制限が課せられている国もあり、これらの健康への影響が個人はもとより、国全体としても大きな損失なることを認識する必要があるかもしれません。

 かつて、タバコのCMがTVから消えたように、毎年、夏になると旨そうに飲むビールのCMがTVの画面から流れて来る日も無くなるのかもしれない。