2015年6月30日火曜日

「座りすぎ」が寿命を縮める?


(2015/06/30)

● 「座りすぎ」の日本人!


・ 1日平均8~9時間…世界一長い日本人の座り時間!

 最近の研究で、長時間の「座りすぎ」がさまざまな病気の発症リスクを高めることが分かってきた。会社では何時間もパソコンの前で過ごし、家に帰ると今度はソファでテレビを見る…そんな生活を繰り返している人は要注意だ。

 早稲田大学スポーツ科学学術院・岡浩一朗教授によると、日本人成人の1日平均の総座位時間は8~9時間程度。世界20カ国の成人との比較では、日本人の座位時間が最長だという。
 日本の正社員は年間に2000時間ほど働いており、ドイツやフランスなどに比べ400時間ほど長い。年間の労働日は231日ほどで、2000時間を労働日で割ると1日当たり8時間40分ほど働いていることになる。



・ 「座りすぎによる運動不足で死ぬ人は喫煙で死ぬ人よりも多い」との意見も!

 オーストラリアのシドニー大学で行われた22万人規模の調査では、一日11時間以上座っていると、4時間未満の場合と比べ、死亡リスクが40%高まるという。

 座位行動研究の第一人者、ネヴィル・オーウェン博士は「立ったり歩いたりしているときは脚の筋肉がよく働き、血液中から糖や中性脂肪が取り込まれエネルギーとして消費される代謝が盛んに行われる。
 しかし、座っていると脚の筋肉が活動せず、糖や中性脂肪が血液中で増えてしまい、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病などのリスクが高まる」と考えられる。

 便利なものが普及した現代の生活スタイルでは、家電を利用すれば、あまり労力を使わずに家事を済ませることができますし、外出する際に車を使うと、歩くことも少なくなります。
 一見、合理的に見える現代の生活ですが、今年1月「座ったまま過ごす時間が長いと糖尿病のリスクが上昇する」という気になる研究結果も発表された。

 これは、カナダのトロント大学が「糖尿病と心疾患との関連」、「糖尿病とがんとの関連」、「糖尿病と総死亡率との関連」など、合計約40の研究について解析をおこなったもので、座っている時間が長い人は、がんの発症や死につながる脳・心血管疾患などのリスクが上昇することが明らかになったというものです。
 中でも顕著だったのは、2型糖尿病のリスク上昇。その数値は、なんと91%増、つまり約2倍にもなります。糖尿病が気になる方にとっては、見過ごせない数字と言えそうです。

 また、スウェーデンのルンド大学の理学療法士アナ・ヨンソンらの研究チームは、25歳~64歳のスウェーデン人女性2万9千人を約25年間追跡、分析の結果、長時間座り過ぎの女性は子宮体がん(子宮内膜のがん)と、閉経前に乳がんと診断される確率が2・4倍高かったという。

 以前から、体を動かすということが、大腸がんや閉経後の乳がんなど予防につながるということは分かっていたが、“座りすぎ”が、どうしてがんが発症するのかというメカニズムは、まだよく分かっていない。
 『座らない!-成果を出し続ける人の健康習慣』の著者、トム・ラス氏は「世界的に見ると、座りすぎによる運動不足で死ぬ人は喫煙で死ぬ人よりも多い」とも指摘。
 過去に英国の医学誌が「タバコを1本吸うと寿命が11分縮む」という記事を掲載したが、“座りすぎ症候群”には、それ以上の懸念が取り沙汰されているという。

 「座りすぎ」解消するには1時間につき5分歩くことで機能低下を防げるという研究もあり、米インディアナ大学の研究チームは、20~35歳の男性に3時間座ってもらい、1時間ごとに大腿動脈の機能を測定。
 わずか1時間の座位で血管機能が50%も低下したが、1時間につき5分の散歩の効果で機能が正常に保たれることも分かったという。

 また、フィンランドの保健省は6月、座りっぱなしの生活に起因する健康問題への取り組みとして、「時には立ったまま食事をした方がよい」と呼びかけ。「Sit Less, Feel Better(座ることを減らせば、気分がより良くなる)」と銘打たれたキャンペーンで「全年齢において座り過ぎは避けるべき」としている。



・ 「スタンディング机」導入で会議時間短く、効率もアップ!

 家庭用品販売のアイリスオーヤマでは、20年以上前からミーティングは立って行うのが普通だという。長丁場になりがちだった朝の会議が10分ほどで終わるようになり、問題発生時にもすぐに集まれ、効率もアップしたという。
 座って仕事をすることに疲れた人がスタンディングテーブルで仕事をしている姿もあり「このスタイルのほうが頭がスッキリ働く」とも語る。

 ただし、立てば済むというワケでもなさそうで、「座っていようが立っていようが、同じ姿勢で動かないことは健康に有害」とする英国・研究者の意見もある。

 英国・エクセター大スポーツ健康科学部のメルビン・ヒルズドン氏らは、16年間にわたり5千人を追跡調査した結果、仕事、余暇、テレビ視聴の時などに座っていることによる死亡リスクへの影響は全くないことが分かったという。
 ヒルズドン氏は「座っていようが立っていようが、同じ姿勢で動かないことが、エネルギー消費の低下を招き、健康に有害である可能性がある」と話す。

 これらの研究が示すように、座っている時間が長いことは糖尿病発症のリスクを上げる可能性があるため、普段からなるべく立ったり動く時間をつくることが望ましいとして、米国糖尿病学会(ADA)の新ガイドラインでは、立ったまま過ごす時間を1日に1時間30分増やすことをすすめています。
 立って動くことを積み重ねれば糖尿病予防につながることが期待できることから、特にデスクワークの多いい方は、まずは仕事中1時間を目標に、イスから離れて過ごすように習慣づけたいところですね。

《毎日の生活習慣の例》

・ 車通勤をしている人は、電車・バス通勤に変える
・ 通勤電車やバスで座席に座らず立つようにする
・ 目的の駅より一駅手前で降りて、歩いて移動する
・ デスクワークであれば、意識して立ち上がる時間をつくる
・ 昼休み中はウォーキングやストレッチをする
・ ランチはちょっと遠めのレストランへ歩いて行く
・ お弁当持参の場合もデスクで食べず、天気の良い日には、歩いて近くの公園まで移動して食べる

ちょっとした工夫ですが、1日90分を目標に、生活習慣として毎日続けることで効果が期待できるかもしれません。