2014年4月11日金曜日

渋田川の芝桜

渋田川の芝桜 2014.04.11
神奈川県伊勢原市の上谷地区を流れる渋田川の河畔、約600m余りにわたる土手沿いに、毎年、4月の上旬から下旬にかけて、赤や白、ピンクの絨毯(じゅうたん)を敷き詰めたように、芝桜で埋めつくされる。
 
 地区の住民の方が、奥多摩より一株の芝桜を持ち帰り、昭和45年頃に、土手に植えたのが始まりと言われています。

 平成9年には、芝桜を地域で守り、育てようと、地元住民による「上谷芝桜愛好会」が発足、さらに市民有志が、芝桜応援隊を組織し、土手の草刈りや川の清掃などを行っている。
  これら大勢の人々の長年の努力の成果もあって、「かながわの花の名所100選」、「かながわのまちなみ100選」にも選定され、伊勢原市の「春を告げる」代表的な風景の一つにもなっている。

 渋田川は、神奈川県西部を流れ相模湾に注ぐ二級河川、金目川(平塚市から下流部は花水川とも呼ばれている)水系に流れ込む支流のひとつで、河川改修により、旧渋田川は上谷地区の少し上流のところにある堰(分水路)で渋田川本流と分かれ、水路のような穏やか流れに変わった。

 周辺は、神奈川県内有数の水田地帯で、田んぼや畑、乳牛などの牧場が点在する農業生産地帯であったが、戦後の高度成長期には高速道路(自動車専用道路)が通り、近年は物流拠点として農地が工場や、大型物流倉庫と変わり、農道は拡張整備されて大型トラックの走る一般道へとかわり、のどかだった土手沿いの道も始終行き交う車の騒音で、川のせせらぎも、しばしかき消されることも。

 それでも、以前から毎年のようにマスコミなどでも紹介されていたこともあり、春のこの時期になると、開花を楽しみに毎年訪れる人も少なくない。
「渋田川の芝桜」が知られるようになった影響からか、神奈川県下でも公園や、河川敷、土手などに芝桜を植える地域も増えていったように思う。

 ただ、公園や河川敷に、整然と植えつけられものは、何となく作為的で、ましてや綺麗に色分けされ、絵や文字に植えつけられたものを見たりすると、それだけで興醒めしてしまう。

 渋田川の芝桜はもちろん、自生したものではなく、春先のシーズン前には人の手によって植え直される。
 色分けされて植えつけられているようには思えるが、何となくその曖昧さと、まるで民家の庭先の延長かと思わせるように植えられた草木が、そこに手作り感を匂わせる。

渋田川の芝桜 2014.04.11
水路のような小川と、民家の庭先を通り抜けるかのような土手沿いの散策路に、幼な子の手をとり散歩する人、立ち止まって写真を撮る人、小橋から川面をながめる老夫婦、土手に座りスケッチをはじめる子供たち、それらもまた風景の中の一部のようにも思えてくるところがおもしろい。
 土手の桜が満開を過ぎ、葉桜となる頃、そろそろ芝桜の見ごろがやってくる。

 今年は春先の寒波と大雪で、例年より開花がやや遅くなっているようだが、そろそろ見ごろとなり週末には結構な人手が予想されるため、散策するには平日に訪れよう。

 桜の花が終わると、春も本番となり、大山山麓は新緑の季節を迎え、春の農作業も一段と忙しくなる。