2013年11月25日月曜日

木枯らしの贈り物

「木枯(こが)らし」の吹いた翌朝は、イチョウの葉の黄色い絨毯(じゅうたん)が目を楽しませてくれる。

 「凩・木枯らし」とは、晩秋から初冬にかけて吹く北西寄りの強い季節風のことをいい、木を吹き枯らすという意味で、木枯(こがらし)と言った。

 気象用語では、気象庁が10月半ばから11月末日までの間で、「西高東低」の冬型気圧配置の時に吹く風速8メートル以上の北寄りの季節風を「木枯らし」と定義している。
 また、毎年シーズン最初に吹いた木枯らしを「木枯らし1号」として気象庁が発表、「冬」の到来を告げる季節の言葉として、マスコミなどでも話題になる。
 関東地方の今年の「木枯らし1号」は11月11日に吹き、昨年より7日早かったという。

 ちなみに、春先の立春(2月上旬)から春分(3月下旬)までに吹く暖かい南寄りの強風(風速8メートル以上で、前日よりも気温が上昇することが条件となる)は、「春一番」と呼ばれ、本格的な春の到来を告げる言葉としても使われる。
 ただし、期間内に認定基準の条件に当てはまる風が吹かなかった場合、その年は「春一番の観測なし」とされる。

 「風」で季節の移ろいを感じるのも、「春夏秋冬」の四季がはっきりしている日本の国ならではかも知れない。


日本では、2、000以上の風の呼び名があるともいわれている。 同じ風でも地方によってその呼び名も変わる。

 古くより農業や漁業者が日々の生活の中で使う呼び名、地形などに由来する地域独特の呼び名、宮中や儀式で使われる言葉、和歌や短歌、漢詩などの文学的な言葉など。

 ちなみに「春一番」という呼び名は、諸説あるようだが石川県の能登地方や三重県の志摩地方以西の西日本で、昔から「春一」または、『春一番」として、特に漁師の人々に使われていたが、民俗学者の宮本常一により1959年(昭和34年)に長崎県の壱岐で用いられている言葉として『俳句歳時記』で紹介したことがきっかけで、「春一番」は新聞などで使われるようになり、一般に広まったとされている。





( 風の名前 )の一例

・ やませ ・・・ 主に東北地方の太平洋側で、夏に吹く北東の寒冷な風で、昔から冷害を起すといわれてきた。
・ はえ(はや)・・ 主に山陰、西九州地方でよく用いられる南風のことで、雨が降り天候が急変し、特に海では時化(しけ)となり海難事故につながるようなことも。
・ ならい(ならひ) ・・・ 東日本の太平洋岸で用いられ、冬の季節風のこと。
・ たま(たば) ・・・ 冬に北日本の日本海側で吹く北寄りの風。
・ ○○颪(おろし)・・・・ 六甲颪(ろっこうおろし)、比叡颪(ひえいおろし)、赤城颪(あかぎおろし)等々、山から吹き降ろす風で、その地方を代表するような山名が呼び名として付けられることが多いい。

・ 花風(はなかぜ)・・・ 桜の花の盛りに吹く風で花を散らしていく風 (俳句の季語としても使われる。)
・ 青田風(あおたかぜ)・・・ 青々とした稲田の上を吹き渡る風 (俳句の季語としても使われる。)


” 木枯に 浅間の煙 吹き散るか ”       (高浜 虚子)

” 海に出て 木枯帰る ところなし ”       (山口 誓子)



(日本の紅葉考)

 ところで、紅葉(こうよう)とは言っても、そこにあるのは紅色ばかりではなく、深山は黄色や濃い赤色、茶色など様々な色彩・グラデーションに彩られる。

 紅葉(もみじ)とは、もともと「色を揉み出づる」の意で、秋になって草葉の色が変ることを指し、万葉集では「黄葉」の字をあてていたようです。
 たくさんの紅葉がある中で、楓(カエデ)の紅葉が愛されたことから、紅葉(もみじ)と言えばカエデを指すようになったそうで、童謡「紅葉」で「水の上にも織る錦」と歌われたのもカエデです。

 余談ではあるが、紅葉を象徴するカエデは花札でも10月(旧暦10月は新暦の11月頃)の10点札に描かれていますが、カエデとともにそっぽ向いた鹿が描かれているこの10点札(鹿十、しかとお)が、無視したりすることを意味する「しかと」の語源だとも言われています。