晩秋・収穫の柿 2013.10.28 |
秋の深まりとともに色づきはじめるのが柿の実であるが、「柿が赤くなれば、医者が青くなる」という言葉があるほど果実の中でも栄養価が高いことでも知られている。
主な栄養素は、ビタミンC、ビタミンA、カリウム、カロテンなどで、特にビタミンCは少し大きめの柿1個で、成人の1日分の必要量を含有しているとも言われている。
ちなみに、イタリアでは「トマトが赤くなれば医者が青くなる」とも言うらしい。
ビタミンC・A、カロテンは、疲労回復や免疫力を高め、風邪予防、ガン予防などに、カリウムは、利尿作用があり体内の余分なナトリウム(塩分)を排泄することで高血圧予防に効果が期待できるといわれている。
また、ビタミンCとタンニンが血液中のアルコール分の分解を促す効果があるとされ、昔から酒を飲む前に柿を食べておくと二日酔いにならないなどとも言われていたが、個人的経験からしてあまり効果があるとも思えないが?
ただし、昔から体を冷す果物と言われ、特に妊婦は食べ過ぎに注意が必要と言われてきたが、一日にせいぜい2~3個までに止めておくことが無難なようで、食べ過ぎによる消化不良やタンニンによる鉄分の吸収を阻害するなどの弊害も指摘されている。
また、干し柿にするとビタミンAは増えるが、ビタミンCが損なわれるため、これによる健康効果は期待できない。
都会で見かけることはほとんどありませんが、昔は庭先に柿の木を植える家も多く、農村では一軒に少なくても一本の柿の木が植えられていました。
昔は、柿の木にも霊魂が宿っていると考えられていたことや、柿の木が折れやすいこと、そして子どもが木登りをして落ちて怪我しないようにとの戒めの意味か、「柿の木から落ちたら三年しか生きられない」などと言われたものである。
柿の木のそばには実をもぎ取るための竹竿などがありましたが、それでもやはり、たわわに実った柿の木は、子ども達にとりましては格好の木登りの対象でした。
そんな時、周囲の大人たちは、我が子同様、他の家の子供であっても注意したものである。
柿の木を見ますと、子ども達が周りで遊んでいただろう頃のことを思い浮かべたりしますが、そんな山里の農村の風景も現在は高齢化が進み、実をもぎ取って食べる人もおらずか、たくさんの柿の実がすずなりとなって枝がたわんでいる光景をときどき見ることがあります。
ところで、柿の実は最後の一つあるいは数個を必ず残し、全部採ってはいけないという「木守柿(きもりがき・こもりがき)」の風習があります。
理由は、自然の恵みを人間が独占するのではなく鳥などに残しておくため、さらには柿の霊が再生し翌年もたくさん実を結んでくれることを霊界の使いである烏に託すためであったとも言われます。
自然へのいたわりと畏敬。一つだけ残った柿の実があたかも木を守っているかのように見えたものです。
与えられた恵みに感謝し、他者へもその恵みを残しておくことは、巡りめぐって自分のためでもあるということでしょうか。
” 柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺 ” (正岡子規)
” 里ふりて柿の木もたぬ家もなし ” (松尾芭蕉)
” 山里はひたむきに柿の赤くして ” (種田山頭火)
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