2013年10月17日木曜日

烏瓜赤き日向の里へ行く

烏瓜の実 2013.10.17
先月16日の台風18号で、近畿地方を中心に甚大な被害があったばかりである。

今月も大型台風26号が、昨日、関東沿岸を北上し、関東・東北に被害をもたらした。
特に、伊豆の大島では、記録的な大雨により土石流が発生、多くの人命が奪われた。

今日は、台風による吹き戻しの風もおさまり、昨日までの夏のような気温から、晩秋へと一気に季節が進んだような気温となった。

北海道や東北、北関東の山々からは、色づき始めた紅葉や初雪の便りが。


日向の里でも彼岸花の花の盛りを過ぎた頃、赤く色づいた烏瓜の実を見かけるようになる。
(今年は、いつもより赤く熟すのがすこし早かったように思う。)


烏瓜は、うり科のつる性多年草で、夏の夜にレース飾りの白い美しい花を咲かせ、秋には楕円形の提灯(ちょうちん)のような緑色の小さな実をつけます。

初めは、瓜(うり)に似た縦じまの模様があり、やがてだいだい色から真赤な色に熟します。
別名を「玉梓(たまずさ)」、「狐の枕(きつねのまくら)」などとも呼ばれ、晩秋のころ葉が茶色に枯れ落ちても、蔓(つる)の先で、まるで火の灯った提灯のようにぶら下っているのを見かけることがある。

この実を烏(からす)が好んで食べたことから、「烏瓜(からすうり)」の名の由来とも言われているが、私自身は烏(からす)がこの実を食べているところを見たことがない。

私自身は、「狐の枕」とか「ヘビイチゴ」、「イヌイチゴ」などと動物の名前がついている物は、一見美味しそうに見えるが、「動物が食べていても、偽物(にせもの)なので人が食べるものじゃないよ」と子供のころ教わったことがある。

山や畑に入ると「ヤマモモ」、「桑の実」、「枇杷の実」、「木苺(キイチゴ)」などなど、何時ごろ、どこの場所に行けばどんな物が生っているか、いたずら盛りの子供たちはだいたい知っていた。
だから、ついつい手に取って遊んだり、口に入れたりすることがないようにと大人は、子供たちを戒める。野山が子供たちの遊び場だった時代の生活の知恵だったのかも知れない。

野鳥が、この実の果肉を食べていることはあるが、人の食用にはあまり適さず、漢方薬や化粧品の原料として活用されていたようである。 赤く熟した実の中身を取り除き、ランタンなどの飾りとして使われることもあるようだ。


烏瓜の実 2013.10.17
烏瓜の実 2013.09.27
烏瓜の実 2013.09.27


宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」では、主人公の少年「ジョバンニ」が、銀河のお祭りであるケンタウル祭の夜に、「烏瓜のあかりを川に流す」、といった行事を見に行く場面に描かれている。

ケンタウル祭は、夏の夜の星祭り(銀河の祭り)として描かれていて、賢治の故郷・岩手県の盛岡地方に伝わる、「船ッコ流し(ふなっこながし)」がモデルではないかとも言われている。

「船ッコ流し(ふなっこながし)」は、お盆の終わりに行われる、「送り火」、「精霊流し」の伝統行事で、お盆で迎えたご先祖の精霊や、その年に亡くなられた(新盆)方の遺影を供物などと一緒に提灯や、五色の紙花で飾られた精霊舟に乗せ、ご先祖や故人を供養し、北上川へ火を点けて流すことにより再びあの世へと送る行事でもある。

銀河のお祭りは、旧暦の「お盆」か「七夕祭り」を、烏瓜の灯りを川に流すところは、お盆の「灯籠流し」をイメージして描かれたのかもしれない。

今年は、宮沢賢治の没後80年にあたる。 昭和8年(1933年)9月21日、享年37歳の若さであった。

農業技術、研究者として、また詩人、童話作家としての創作活動をするも、作家としての評価は生前より、むしろ没後に評価がされることとなったが、残された作品は色あせることなく、いまも多くの人に愛読され、また彼の人生観や宗教観、生き方においても後世の人々に多大な影響を与えて続けている。

日本を代表する童話作家の一人といえるであろう。





” 烏瓜赤き日向の里へ行く ”         (裟来)