2013年10月12日土曜日

無花果を食らう

イチジクの実 2013.10.12
今日も秋本番と思えない暑さになりました。 東京では昨日に続き、観測史上最も遅い真夏日(都心で31.3度を記録)を更新したという。

 秋風が吹き、朝夕も寒さを感じるほどだったところに、このところの季節外れの暑さで春の桜花(ソメイヨシノ)が咲き始めたと、夕方のテレビで女性ニュースキャスターが話していた。

 ところで、この時期の旬な果物の1つに「イチジク」がある。 「無花果」と書いて「いちじく」と読み、アラビア南部が原産地で、江戸時代初期には渡来していたとも言われています。
 伝来時には、「南蛮柿(なんばんがき)」、「唐柿(とうがき)」などと呼ばれていたようです

 高さが3~6メートルの落葉果樹で、無花果と書くが、決して花が咲かないわけではなく、初夏に葉の脇の部分から卵形の袋のような花托を出し、その内側に花をつけるため外側からは見えないことから、漢字で「無花果」の字が当てられたとも言われている。

 聖書にもたびたび登場していることから、世界最古の栽培果樹ではないかともいわれ、「エデンの園」でアダムとイブが食べた禁断の果実は、リンゴではなくイチジクだったとする説もあります。

 「旧約聖書」の創世記の章(3章7節)には、「エデンの園で禁断の果実を食べたアダムとイブは、お互いが裸であることに気がついて、恥ずかしさのあまりイチジクの葉で作った腰ミノで前を隠した」とあり、旧約聖書の舞台であった当時の中東ではリンゴが採れなかったのでは、とされたことが根拠のようで、葉は、3裂または5裂のものがあり、「天狗の団扇(うちわ}」のように幅広く、前を隠すには十分な大きさである。



まだ未熟な実
上部に雄花、下部に雌花の淡紅白色の小さな花を咲かせ、実は花序全体が肉質に変化したもので、秋には暗紫色に熟し、不老長寿の果実とも言われた。
 本来、秋のこの時期が旬であるが、近年は早熟の物が夏には店頭に並ぶことも多く、夏のくだものと思っている人もいるのではないだろうか。

 果実は、生食のほかに、乾燥、缶詰、ジャム、ソースの材料等に加工されます。

 幼いころ、我が家の庭先にも大きなイチジクの木があり、秋になるとたくさんの実を着けた。
 父親が、竹竿の先に小さな金具と袋網を取り付けた手作りの道具で採ったものを、イチジクが大好物だった母が、縁側で「美味しい、美味しい」と食べていたのを思い出す。

 何時も母に「食べなさい、美味しいよ」と言われても、葉や、もぎ取った新鮮な実の茎の部分から出る乳汁が、どうも気持ちが悪くて、子供のころからしばらくは食べたことが無なかった。
 いわゆる「食べず嫌い」というやつか。 

 この時期、店先で「いちじく」を見るたびに、母の美味しそうに食べていた顔を思い浮かべてしまう。




” 無花果を 食らう姿や 母に似て ”            (娑来)

” 無花果や 竿に草紙を 縁の先 ”            (夏目漱石)